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- 人の気持ち
- 「あなたには、私の気持ちはわからない」
- 職場の先輩に、こう言われてしまったAさん。心が通じていると思っていただけに、ショックなひと言でした。
- 先輩とAさんは、子供や親の年齢が近いこともあり、共通する悩みも多く、お互いに愚痴を言い合ったり、相談をする仲でした。
その先輩からのひと言だけに、Aさんにはその意味するところが、すぐには理解できませんでした。
- 振り返ってみれば、確かにふたりでいろんな話はしてきたものの、多くはAさんが喋り、先輩は聞き役だったことが思い出されました。
- Aさんは、自分の家庭の愚痴を聞いてもらうことで随分と気が楽になりましたが、先輩はどうだったのか? 何か家庭で問題を抱えているのに、それをAさんには相談できずにいたのか?
「自分はどのくらい、先輩のことを分かっていたんだろう…」
- 思いを巡らせば巡らすほど、我よしで身勝手だった自分への後悔の念が、Aさんには湧いてくるのでした。
- それからしばらく経って、Aさんは気付いたことがありました。
職場で、先輩の同期の多くが係長に昇進したのに、先輩の昇進は見送られていたのです。もしかして先輩は、Aさんが思っている以上に、会社での評価を気にしていたのかもしれません。
- 数日後のことです。
先輩がAさんのところにやってきました。
「この前は、変なこと言ってごめんなさい。Aちゃんに甘えてしまっただけなの。人の気持ちなんて、説明されないとわからないわよね」
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「あなたには、私の気持ちはわからない」
- 人がそう言う時、その人は自分でも、自分の気持ちをわかっていないことがままあります。どうしてこんな感情が湧き上ってくるのか、整理できていないのです。
そして、その持て余している自分を、何とかして欲しいというSOSでもあります。
- この一件で、Aさんは、相手の気持ちを思いやる大切さを学びました。
先輩は、自分の気持ちをできるだけ明確に伝える必要性を学びました。
- ただ、いくら相手の立場に立っても、自分の気持ちをどんなに明確に伝えても、それでもわかり合えないことは多々あります。
- 人はお互いに、理解し合えないのかもしれません。
- だからこそ、理解しようと努力します。相手の立場に立とうとします。
自分の気持ちを伝えようと懸命になります。
- 私たちは、ひとりで歩いている訳ではないのです。
わかり合えようが、わかり合えなかろうが、一緒になって歩いているのです。
- もし、ひとりで生きているとしたら、自己という認識はないかもしれません。他の人がいて初めて、自分を他者と差別化できるようになります。
自分本位になれるのも、我よしになれるのも、身勝手になれるのも、他の人がいてくれるお陰なのです。他の人から見れば、あなたがいてくれるお陰なのです。
- わかり合えなくても構いません。
相手を、自分を、大切にして暮らしたいものです。
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