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視 野
私たちの視野というのは、とても狭いものです。
普段は、地上1~2メートルの高さから世界を眺め、せいぜい数キロ先まで見えるかどうかです。全世界の何%を視野に捉えているでしょうか?
建物の中にいるときはなおさらで、半径数メートル~数十メートルの世界に私たちは暮らしています。
いやいや、ネットの世界ではそんなことはない。瞬時に世界とつながることができる。そんな反論が聞こえてきそうです。
確かに、そうかもしれません。
しかし、私たちには肉体という衣があります。肉体という衣を着ている限り、私たちは現実的には、地上、もしくは床上1~2メートルの住人です。そしてほとんどの悩みが、地上、もしくは床上1~2メートルの暮らしから生じているのです。
もちろん、だから、その悩みが小さいとか取るに足らないとか、そういうことを言っているのではありません。どんな些細な悩みでも、その人にとっては地球滅亡に匹敵する、ということはよくあることです。
しかし、悩みから脱出しようとするとき、自分が生きている現実世界の狭小さを認識することは、無駄なことではありません。
地上、もしくは床上1~2メートルの高さから悩みが生まれたのなら、その悩みを、地上1キロの高さから見下ろしたらどう見えるか? 逆に、地上1ミリの高さから見上げたらどう見えるか? 
人間の視点、鳥の視点、蟻の視点…。
もっと拡大してもいいでしょう。
山の視点、雲の視点、月の視点、太陽の視点、
細胞の視点、ウイルスの視点、遺伝子の視点…。
大小遠近、無数の視点が存在する中で、私たちの抱える悩みのほとんどが、そのごく一部の視点から生まれたものだ、と気づくに違いありません。
たまには鳥になってみましょう。たまには蟻になってみましょう。
そして、また人間に戻ってみましょう。
そのとき、悩みはその形を変えているかもしれません。
 

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