- 悩みとSTAP細胞
- いったん役割が確定した細胞が、初期化されて受精卵のような万能細胞に
もどることはない、
というのが、長い間の生物学の常識でした。
- それが覆されたというニュースが、癸巳年の最後の週に飛び込んできました。
ある種の刺激を加えると、機能分化した細胞が万能細胞になるというのです。
生存の危機にさらされた細胞が、生き残るために万能化するのではないか、
などと理由付けがされています。
- この言わば初期化現象を、このコラムなりに読み解いてみたいと思います。
つまり、私たちの悩みも初期化できるのではないか、という道筋で。
- 私たちは毎日を、ある役割を演じながら生きています。
例えば会社員という役割、主婦という役割、親という役割、子どもという役割、
その人の年齢の役割、地域人という役割、社会人という役割、学生という役割、
女という役割、男という役割、人類という役割、生物という役割、自分という役割…。
- そして、私たちの悩みは、この役割の中に閉じ込められることで生じることが
ほとんどです。
会社での人間関係やポジションの悩み(社会人としての役割)、家族間の葛藤
(親、子供、兄弟という役割)、失恋(男女の役割)、病気(生物としての役割)などなど。
つまり、与えられた役割が何らかの障害に出会ったり、その責任を十分に果たせないときに、悩みが生じているのです。
- しかし、思い出しましょう。
私たちは、その気になれば、いつでも役割が決まる前にもどることができるのです。
それらが決まる前の、何だってアリの状態に返ることができるのです。
- 言ってみれば、
自分は腎臓の細胞だ、あいつは肝臓の細胞だ。
腎臓の方がえらい、肝臓の方が大事だ、と争っていても、
気付いてみたら実は、
腎臓にも肝臓にも、それ以外のものにも、何にでもなれる存在だった、
自分だと思っていたものは、一時の仮初めの衣装に過ぎなかったということです。
- 自分はもともと何者でもない。けれど、何者にもなれる。
自分は貧乏でもあり、金持ちでもある。
自分は無能でもあり、有能でもある。
自分は嫌われ者でもあり、人気者でもある。
自分はあなたでもあり、あなたは自分でもある。
- そうだとしたら、悩みなど生じようがありません。
- 細胞の話を発展させすぎでしょうか?
でもあなたの体は、細胞でできているのですよ。
肉体と精神は違う?
確かに違います。
でも、ではなぜ肉体にできることが精神にできないのでしょうか?
肉体より自由であるはずの精神に。
- そして本当に、肉体と精神は違うのでしょうか?
-
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